ルテオリンはポリフェノールの1種で、菊の花やシソ、セロリ、カモミール茶などに含まれています。ポリフェノールはなんとなく体に良いという印象があるのではないのでしょうか。実は意外にもそうではなく、ヒトに効果が認められているのポリフェノールは少ないのです。
そんななか、ルテオリンには次の様な機能性表示が認められています。
本品にはルテオリンが含まれます。ルテオリンには尿酸値が高め(5.5㎎/dL超~7.0㎎/dL未満)な男性の尿酸値を下げる機能があります。
このような機能性を示すためには、効果があることを証明する論文が必要です。ここでは根拠となる論文に触れ、機能性表示食品としてのルテオリンを解説していきたいと思います。
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Contents
そもそも尿酸とは??
尿酸とは、DNAや旨味成分に含まれる「プリン塩基(プリン体)」が、分解されてできるものです。また、尿酸は水に対する溶解度が非常に低いため、簡単に、しかも綺麗な針状の結晶として析出してしまいます。この結晶により起こる炎症が「痛風」です。
プリン体の多い食事を取り続けると、血中の尿酸値が上がり、高尿酸血漿状態となり、痛風や腎結石の原因になります。
ルテオリンと尿酸値の関係。根拠となる論文を見てみる
その論文がこちら。日本のオリザ油化株式会社の研究チームによる報告です。
Luteolin-rich chrysanthemum flower extract suppresses baseline serum uric acid in Japanese subjects with mild hyperuricemia
Intergrative Molecular Medicine 4(2): 1- 5, 2017
直訳すると
ルテオリンリッチな菊の花抽出物は軽度高尿酸血症を有する日本人被験者の血清尿酸値ベースラインを抑える
内容を簡単にまとめます。
オリザ油化に勤務している22〜71歳の健康な男性30人
尿酸値は4.5〜7.8mg/dL
- A:ルテオリン10mgを含むカプセルを摂取するグループ
- B:プラセボ(ルテオリンが入っていないカプセル)を摂取するグループ
2つのグループに分けて二重盲検クロスオーバー試験を行う。
二重盲検:誰がどちらを摂取しているか最後まで誰もわからない
クロスオーバー試験:一定期間の後、AとBを入れ替える(ルテオリンを飲んでいたら偽薬を、偽薬だったらルテオリンを摂取することになる)
全ての被験者(26人)を解析したところ、ルテオリンを摂取した場合とプラセボを摂取した場合で差が出なかった。一方で、尿酸値が5.5超〜7.0mg/dL未満の人(20人?)に絞り解析したところ、有意な尿酸値の低下が見られた。
尿酸値がやや高め(=5.5超〜7.0mg/dL未満)の男性が、ルテオリン10mgを4週間摂取した時、尿酸値の低下が認められる
どれくらい低下させたのかをグラフに表しました。4週間ルテオリン10mgを摂取した場合と、ルテオリンを含まない偽薬を摂取した場合の比較です。
Intergrative Molecular Medicine 4(2): 1- 5, 2017及び尿酸ダウン ブランドサイト(https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?gCode=32830)を参考に作成
低下させた値は約0.2 mg/dLとマイルドですね。当たり前ですが、薬のような劇的な作用は期待できなそうです。
今回は5.5〜7.0mg/dL未満の人にしか効果が認められませんでした。これは、決して効果が無いというわけではありません。もしかしたら、期間を延ばしたり、被験者の数を増やしたりしたら効果が認められる可能性もあります(もちろん認められない可能性も)。
5.5〜7.0mg/dL未満という値、個人的にはちょうどいい値だと思います。尿酸値が7以上だと、医師や管理栄養士の指導のもとでの食事療法が推奨されます。さらに、10mg/dLを超えるなど、あまりにも尿酸値が高い場合、サプリメントでどうこうなるレベルではありません。医師の指導のもとの治療が必要です。
最後に、被験者の人数、症例がちょっと少ないですね。人数が多いほど説得力のある確実なデータが得られます。もっと人数を増やしたら、効果が全くなかったという可能性もゼロではありません。今後に期待したいですね。
ただ、これは「薬」ではなく「健康食品」であるということを忘れてはいけません。有意な違いが出ただけでもすごいと思います。
ルテオリンのメカニズムは?
尿酸値を下げるためには、
- 尿酸の原因であるプリン体の吸収を抑える
- プリン体から尿酸ができるのを防ぐ
- 尿酸の排泄を促進する
などが考えられます。
ルテオリンのメカニズムは正確には分かっていませんが、②の「プリン体から尿酸ができるのを防ぐ」ことによると考えられています。具体的には、キサンチンオキシダーゼという尿酸を合成する酵素を阻害するとされています。このメカニズムは、医療用医薬品であるアロプリノールと類似しています。
ルテオリンは安全?副作用や危険性はない?
ルテオリンを摂取しても全く問題ない量は1日30mgとされています。機能性表示食品の摂取量は1日10mgですので問題ないことがわかります。また、1日30mgという値はかなり厳し目に設定されています。
一度に大量に摂取すると吐き気などの副作用が起こる可能性があるとされていますが、たとえこれを少し超えても直ちに健康に問題があるとは考えにくいです。
いつ飲めばいいの??
ルテオリンを含む機能性表示食品に、摂取するタイミングは決められていません。これには理由がいくつかあると思います。
1つ目は、飲むタイミングを定めると、それは薬になってしまうから。いわゆる「用法・容量」を決めてしまうと、食品の領域を超えて薬になってしまいます。
2つ目は、ポリフェノールの吸収については実は不明な点が多いから。薬には、食事と一緒に摂ると効き目が弱くなってしまうものがあります。ではルテオリンはどうなのかというと、実はよく分かっていません。ルテオリンをはじめポリフェノールは、どこでどのようにどのくらい吸収され、体内でどのように存在しているか、十分に分かっておらず、現在研究段階です。とはいえ、自由に摂取して有効であったという事実があるので、いつ摂取しても大丈夫とプラスに考えた方が良いですね。
効果がない?ルテオリンの間違った使い方
難消化性デキストリンなど、食事からの糖や脂肪の吸収を抑えるといったものが多く販売されています。これは、食事の前に摂取することによって、糖や脂質の吸収を遅らせるものです。ルテオリンにこの様な効果があるでしょうか。例えば、高プリン食を摂る前にルテオリンを飲めば、吸収が抑えられるような。
結論としては、効果は認められていません。なぜならルテオリンは、尿酸の吸収を防ぐものではないためです。
吸収を抑える系のものは、食事と一緒に摂ることで、消化管を食事と一緒に移動し、腸で糖や脂質が吸収されるのを抑えます。物理的に吸収されない様にしている側面が強いです。
一方、ルテオリンはキサンチンオキシダーゼという尿酸を作る酵素を阻害すると考えられています。吸収を物理的に抑えるものではありません。
また、キサンチンオキシダーゼは肝臓にいる酵素です。効果を示すには、ルテオリンは肝臓にいる必要があります。幸い、ルテオリンを初め腸から吸収されたものの多くは肝臓に向かいます。しかし、ずっと肝臓にいるわけではなく、血流に乗り体全体に分布したり、一部は代謝を受け分解されます。
何が言いたいのかというと、ルテオリンが、プリン体がキサンチンオキシダーゼにより分解されるタイミングに、有効な量が肝臓にいるかどうかが問題になります。
10mgを1回摂取しただけでは、効果はないとされていますが、これは、効果を示すために有効な量が肝臓にいなかったためとも考えられます。
量が足りないなら、一度にたくさん摂ればよいというわけでもありません。例えば、ビタミンCなど水溶性ビタミンは大量に摂っても過剰分はすぐに排泄されてしまいます。また、1度に多く摂ると腸から吸収しきれずに排泄されてしまうものもあります。ルテオリンが当てはまるかは分かりませんが、量は守ったほうが良いでしょう。
【まとめ】
ルテオリンはポリフェノールの一種で、尿酸値を低下させることから機能性表示食品として用いられている。しかし、効き目はマイルドで、決して薬の代用になるものではない。また、症例数が少なく、今後のさらなる研究が待たれる。